【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
雲を掴むような状況だ……と半ば諦めていると、出し抜けに私の手にお肉のパックが押しつけられる感触がした。

「え……?」

手を引くと私は確かに一パック九九円の鶏もも肉を掴んでいて、目を瞠る。

すると人の輪の中から出てきたおばちゃんが、私に向かって親指をぐっと立てた。

「おばちゃん……!」

どうやらこちらのおばちゃんが私にお肉を握らせてくれたらしい。私はお礼を言って、上機嫌で泉といっちゃんのところに戻る。

「あのおばちゃんのおかげでお肉が買えたよ」

少し離れたところで眺めていたいっちゃんに報告すると、いっちゃんは首を傾げる。

「知り合いか?」

「ううん、全然知らない人だよ?」

私の答えに、いっちゃんは一瞬絶句した。

「……」

「いっちゃん?」

「……なかなか貴重なものを見せてもらった」

また遠い目をしたいっちゃんが呆然と呟いた。そのあともどこか居心地が悪そうで、連れてきたのは私だけれど、なんだかかわいそうになってくる。

「いっちゃん、泉と先にお店の外に出てていいよ」

「いや、大丈夫だ」

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