【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
無我夢中で駆け寄り、いっちゃんから泉を引き剥がす。いきなりいっちゃんから離された泉は大きな声で泣き出した。

私の剣幕に、いっちゃんは呆気に取られている。

「いきなりなんだよ……?」

「泉にパパなんて呼ばせないで!」

勝手なことをするいっちゃんが許せなかった。

けれどいっちゃんはどうして私がそこまで怒るのかわからないようだった。

「別にいいだろ? ここに泉くんの父親が通っている様子もないし、俺が名乗ったって――」

「泉のパパはひとりだけなの! それはいっちゃんじゃないの!」

いっちゃんじゃない――それはほとんど自分に言い聞かせる言葉だった。勘違いしちゃいけない。家族ごっこはできても、いっちゃんとは本当の家族にはなれないのだ。

それなのに、泉にまで期待させないでほしかった。

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