崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
◇ ◇ ◇
──ハイランダ帝国歴二二二年、冬。ハイランダ帝国コスタ領にて。
ハイランダ帝国の片田舎に領地を構えるコスタ子爵家で、アイリスは鏡台の上に置かれた、髪飾りを静かに見つめた。
精緻な金細工の中央には、緑色の翡翠が輝いている。
『これはね、お父様からいただいたの。いつかアイリスも大きくなったら、あなただけの素敵な騎士様が現れるわ。そして、素敵な髪飾りを贈られるわ。だって、こんなに綺麗な髪なのだから』
優しかったお母様はアイリスの髪を結いながら、よくそう言って笑っていた。宮殿では、年に一度だけ、皇后様が主催する、国中の貴族が集まる舞踏会があるのだと。
お母様が婚約者であるお父様と初めて二人でその舞踏会に参加したとき、お父様はこれをお母様に贈った。
あの堅物でいつも眉間に皺を寄せているお父様が髪飾りを贈るなんて、一体どんな顔をして選んだのだろう?
それを想像するだけで、自然と笑みが漏れた。
──ハイランダ帝国歴二二二年、冬。ハイランダ帝国コスタ領にて。
ハイランダ帝国の片田舎に領地を構えるコスタ子爵家で、アイリスは鏡台の上に置かれた、髪飾りを静かに見つめた。
精緻な金細工の中央には、緑色の翡翠が輝いている。
『これはね、お父様からいただいたの。いつかアイリスも大きくなったら、あなただけの素敵な騎士様が現れるわ。そして、素敵な髪飾りを贈られるわ。だって、こんなに綺麗な髪なのだから』
優しかったお母様はアイリスの髪を結いながら、よくそう言って笑っていた。宮殿では、年に一度だけ、皇后様が主催する、国中の貴族が集まる舞踏会があるのだと。
お母様が婚約者であるお父様と初めて二人でその舞踏会に参加したとき、お父様はこれをお母様に贈った。
あの堅物でいつも眉間に皺を寄せているお父様が髪飾りを贈るなんて、一体どんな顔をして選んだのだろう?
それを想像するだけで、自然と笑みが漏れた。