呉服屋王子と練り切り姫
「モナカチャン、ヤッパリピンク、ニアウネ!」

 ゲーンさんの奥さんは、何故か私の浴衣姿をべた褒めした。

「ジンパチモ、ソウオモウデショ?」

 甚八さんを盗み見ると、ニコニコと愛想のいい笑顔を浮かべて「そうですね」と言った。

「愛果は、何を着ても似合うんですよ。自慢の恋人です」

 こ、こ、こ、こいびとーーーー! 今、この人はっきりと恋人って言ったよね? ね? ね?
 私は赤くなった顔を俯かせると、不意に隣上から声が降ってきた。

「お前、どこまでついてくるつもりだ?」
「ふぇ?」

 顔を上げると、「男湯」と書かれた青い暖簾をくぐる寸前だった。

「マナカチャン、ジンパチトイタイノネ! カワイイ!」

 ゲーンさんはニコニコトしながら「Bye」と言って甚八さんを引き連れて男湯へ入っていく。私は奥さんに手を引かれ、うきうき気分の奥さんと共に頬を赤くしながら女湯の暖簾をくぐった。
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