QUALIA ー最強総長×家出少女ー
『そう。だけどね。どんなにあなたが特別でも、あなたは一人では生きていけないの』

お母さんの顔はいつになく真剣だった。

『だからいつでも、誰かを手助けできる準備をしておくのよ。あなたの持つ力を、みんなのために使えば、きっとみんなも、あなたが困っているときに助けてくれるからね』

演奏会当日。会場はたくさんの人であふれて、二人が来たかは分からなかった。

『お母さんは“ああ”言ったけど、今日は私、二人のために弾くから』

演奏は最高の出来だった。大喝采の中、私は観客の中に両親の姿を探した。

『琴葉さん!』

舞台袖からスタッフに声をかけられた。

『なに?』

『実は、ご両親が…』

会場に向かう途中、二人は車で事故に遭った。

原因は相手の飲酒運転による信号無視だ。けど、両親が会場へ急ぐあまり、ブレーキを踏む反応が遅れた可能性も否定できなかった。
< 135 / 304 >

この作品をシェア

pagetop