QUALIA ー最強総長×家出少女ー
手を振り、みんなと別れた。蓮と一緒に、飛行機へと向かう。

「昨日は、待ってたのに…」と前を歩く蓮。

「ごめん。どうしても会いたい人がいて…」

しばらく無言になる。蓮は昨日のことを、ほんのりと悟ったのかもしれない。

蓮は立ち止まると、振り返った。もうすぐ搭乗口だ。蓮は私に手を差し伸べる。

「これからは、二人で支え合っていこう」

蓮は優しく微笑んだ。

いつだって蓮は、私のことを想ってくれている。

蓮は本当なら、私を恨んでもいいはずだ。ピアニストだったお父さんとは、私が原因で蓮と絶縁したのだから。

今でも、お兄ちゃんのことは蓮にだけは相談すればよかったって後悔している。

……そうだ。蓮は私にとって、大切な幼なじみ。

なのに、今はどうしても、その手を握ることができない。

「蓮、私はもう…」

私は蓮の横を通りすぎる。

「あなたの、彼女じゃないから…」
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