QUALIA ー最強総長×家出少女ー
颯太君はコーヒーのおかわりを一口すすう。

砂糖も入れないブラックで、カップに触れる唇が、大人の色気に満ちていた。

「進学を目指して勉強してるよ。どうしても行きたい学部があってね」

「どこに?」

颯太君は静かに微笑む。

「医学部。僕、お医者さんになりたいんだ」

心臓がドキッとした。胸から熱いものが込み上げる。

「変かな? “文字の読めないお医者さん”なんて」

私はすごい勢いで首を横にふる。

「そんなことないよ! すごくいい目標じゃん!」

「ありがとう。琴葉ちゃんがペコで僕に一歩を踏み出させてくれたおかげだよ。覚えてる? あのメニューの絵」

「あぁ、なつかしい!」

文字しかなかったメニューに、コーヒーとかの絵を描いたんだ。徹夜した気がする。

「文字が読めなくても、工夫次第で僕は何でもできる。そう琴葉ちゃんが気づかせてくれた。だから僕は、お医者さんになって、僕と同じ障害に苦しむ人を助けてあげたいんだ。琴葉ちゃんが僕にしてくれたみたいに」
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