【短編】乙女戦隊 月影〜Dead Or Alive〜
崩れ落ちるあたしに、哲也は振り返らずに、口を開いた。

「今夜は、お前の好きなカレーだ」

うちは、哲也と二人しかいない。

「勝てたら、食卓で会おう」

去っていく哲也の背中を見送るあたしの視線を、半田は乳を揺らしながら、遮った。

「お前は、カレーを食べれん」

半田は胸の谷間から、携帯電話を取り出した。

「あ、あたしの携帯電話!」

それは、今朝没収された携帯だった。

「いでよ!マジで魔神!ポケホウダイン」

変な粉を振り掛けられたあたしの携帯は、二メートルくらいに巨大化した。

「携帯小説書く時は、ポケホウダイに入りなはれや」

ポケホウダインの画面に、イケメンの顔が映り、口を動かす。

「あたしの携帯を、返せ!」

ポケホウダインに、回し蹴りを繰り出そうと、足を上げた瞬間、シャッター音が鳴った。

「お約束のパンチラゲット!」

「え!?」

あたしは蹴りを止め、スカートを押さえた。

「ハハハ!恥じらいのレッドはん!このパンチラをネットに、ばらまかれとうなかったら、おとなしくしなはれ」

「レッド!」

ブラックとブルーがあたしの横に来る。

「おっと!他の色はんも、やで。もし動いたら、痛い内容の文を、登録してあるアドレスに、一斉メールしまっせ」

エセ関西弁を話すポケホウダインに、特にあたしは手を出せない。

「卑怯だぞ!」

「魔神に卑怯は最大の誉め言葉や」

攻め倦んでいるあたしの横を、誰かが通り過ぎた。

「ピンク!ハンマー?」

首を傾げながら、ピンクは巨大なハンマーを振り上げ、ポケホウダインに向けて、振り落とした。 

「何するんや!あんさん」

何とかハンマーを避けたホウダイン。

「あたし…帰りたいんです」

またハンマーを振り上げると、

「友達がどうなっても、いいちゅうんでっか?」

「あたし…この人達、知らないし…別にどうなっても構いません」

確かに、あたし達はピンクとは初対面だ。

「お、同じ戦隊でっしゃろ!袖触れた…何とかっていいまっしゃろ!ほんま義理人情もない世界になったんですなあ」

ポケホウダインは嘆いた。
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