響は謙太郎を唆す
響は当然のように、謙太郎と一緒にいる未来を、共に歩こうとする気持ちを、口にした。
謙太郎はうれしかった。
その上で、まだ、謙太郎が自分で決めるように、謙太郎の気持ちと選択を1番に考えてくれてる。
謙太郎は困って俯いた響の顔に、右手を添えてこちらを向かせて目を合わせた。
「ありがとう。俺はこんな状況だ、何も言えないと思ってた。でも1つだけだ、確かに思ってるのは、お前と一緒にいたい」
謙太郎は、手を響の頰に当てたまま、響の肩に額を乗せた。
「俺、響が好きだ」
謙太郎は、心がギューとした。
息が苦しいぐらいに。
「響といたい⋯⋯ 親が、先生が、響に何かするかもしれない。俺の決心が気に入らなくて、響のせいにされるかもしれない。俺の力が不足していて、守れないかもしれない⋯⋯ 挫折するかもしれない。路頭に迷うかもしれない。正直、怖いんだ」