誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
――やっぱり。
”シンお兄ちゃん”は、お兄さんじゃない。
律さんだったんだ……。
どうして、今まで隠していたの?
どうして、今まで教えてくれなかったの?
どうして、私の前から姿を消したの?
聞きたいことは、山ほどある。
だけど、律さんに抱きしめられた瞬間、全てどうでも良くなった。
しっくりくるこの感じ、憶えている。
「ずっと会いたかったんですよ……」
「そうか」
「律さんは、会いたくなかったですか?」
「……俺は、見てたから」
「え?」
「百花の節目には必ず、見に行っていた」
あ、そうか、お花!
毎年の誕生日や、入学、卒業、成人式の時も、届いたお花。
あれも、律さんだったんだね。
「ずっと近くにいたんですね」
「あぁ、百花が知らなかっただけだ」
「言ってくれたら良かったのに」
「言うつもりはなかった。今日も……あの失言さえしなかったら答えなかった」
律さんはそう言うと、私の体を離した。
顔を見ると、いつものポーカーフェイス。
昔の、あの優しい表情はどこに行っちゃったの……?
「1つだけ、聞いていいですか?」
「質問の内容次第だな」
「どうしてお兄さんは、自分がシンお兄ちゃんだと嘘を? それが嘘だって律さんなら分かってたはずなのに、何も言わなかった理由を教えてください」