誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします


「そんなの、悲しいですよ」

「……」

「私は、”シンお兄ちゃん”にずっと会いたかった。やっと会えたと思ったのに、別の人だったなんて……それどころか、本当のシンお兄ちゃんは私に傍にいて、気が付かなかったなんて」


自分で自分が、情けない。
私の”会いたい”なんて、その程度だったのかって。
再会してすぐ気づくような、そういう強い想いだと思っていたのに。


「昔のことを忘れろとは言わないが、美化はするな」

「……律さん」

「もう何十年も経つんだ、俺も君もあの時の子供じゃない」


なんて、寂しい瞳をするのだろう?
律さんは口では冷たいことを言いながら、全身で私に助けを求めているようにも思える。

複雑な環境で育ったんだね。
どれだけ、傷つき辛い思いをしてきたの?
その辛い日々の中、私の存在はどんなものだった?
どうな想いで、私と再会した?
妻にしようとした?

律さん――あなたの言動は矛盾しているよ。


「忘れませんし、美化もしてません」

「……」

「私にとって律さんと過ごした幼い日々は人生の支えでした。これからもそうします」

「百花」

「そして妻である以上は、律さんから離れません」

「……勝手にしろ」


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