誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
第六章


月曜日の昼下がり。
以前から家に遊びに来たいと言っていた果歩が、やって来た。
お土産でもらったケーキを頬張りながら、先日のことを報告した。
律さんが、シンお兄ちゃんだったという件だ。


「それって、普通に考えたら百花のことが好きだよね」

「そう思う?」


果歩が大きく頷く。
耳元でピアスが大きく揺れて、きらっと光った。


「だって、常務は百花の成長をずっと近くで見てたんでしょ? 毎年、誕生日に花なんか贈っちゃってさ。百花のピンチに籍入れて、経済面で援助して、クズの兄貴からも守ってくれてたんでしょ?」

「クズの兄貴……」

「好きじゃなきゃそこまでしないって。いくら自分にとって条件が良かったとしてもさ」


実際のところ、自分でもそうなのかなって思う。

結婚するとき、律さんは「嫌な相手と結婚させられそうだから」と言っていた。
だから、私と期間限定の結婚をしたい、と。
その動機だけを切る取るなら、私じゃなくてもっと自分に関係のない人を選べばいいのに、わざわざ私を選んだ。

それって、私に特別な感情を持ってくれていると思ってもいいよね?


「百花は? 常務のこと好きなの?」

「それは……うん。好き、だと思う」

「いつから? 初めからじゃないよね」
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