王子なドクターに恋をしたら

来てしまったよ東京に

……



「き、来てしまった…」

空港に降り立ったあたしはすごい人波に唖然としながら呟いた。
あたしの荷物は聡子さんの荷物と一緒に先に送ってもらったから鞄一つで身軽だけど、歩く度人とぶつかりそうで目が回る。
聡子さんに「和泉さんに直接あえば正直に話してくれるはずだわ」と、背中を押され、「東京に行ったらたくさんお買い物しましょう」なんて誘惑に負けあたしはとうとう東京に来てしまった。

両親には和泉くんに逢いに行くと言うと10日も休みをくれて快く送り出してくれた。
仕事もあるし少しは反対されると思ったのにちょっと拍子抜け。
東京に来たのは修学旅行以来だからどこをどう行くのかもわからず、聡子さんに導かれるままモノレールに乗り込んだ。
田舎者のあたしにはこの人の多さと地下鉄やらなんやら多すぎる路線は難解そのもの。
慣れてるらしい聡子さんと離れたらあたしはたちまち迷子確定だ。

そういえば修学旅行の自由行動の時も明日美達仲良しグループで電車に乗り間違えて迷子になったっけ。
東京の外れまで行ってしまってから気付いてみんなで焦って地図を検索してた懐かしい思い出にクスリと笑った。

どうしたの?と聞いてくる聡子さんにそのことを話すと、私も初めは何度も迷子になったのよ、と、院長先生と付き合ってた頃、一度東京に帰った院長先生を追いかけて一人で逢いに来た時の事を教えてくれた。
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