王子なドクターに恋をしたら
「いや、叶ちゃんが謝ることはないよ。兄さんの過保護もたまに迷惑だけど、紀子さんがいない上に兄さんもいなかったらやっぱり心配だし、兄さんからしたら一応医者である僕が傍に居た方が安心して出張に行けたんだろう」

僕は産科医ではないけどね。と肩を竦めた和泉くん。
いつも穏やかな和泉くんがトゲのある言い方してるのにちょっと驚く。
兄弟だからこその物言いなのかな?

仕事で斗浦部に通ってるわけだから本来ならそんなお願い聞けないけど、お兄さんたっての希望と職場の上司の意見が合致したために和泉くんは斗浦部には来れなかったということらしい。
その職場の上司が斗浦部に行くことに難色を示しているのか。
あたしに逢うことを禁じたそのパワハラ上司を思い浮かべて苦虫をかみ潰した。

「ねえ、和泉くん。それでも何度か斗浦部に来てたんだよね?なんであたしに逢いに来てくれなかったの?逢えないほど忙しかった?」

「そ、それは…」

あたしに逢いに来なかったホントの理由を聞き出したくてつい問い詰める口調になってしまった。
顔色を変えて言い淀んだ和泉くんはそれは後で話すとやんわり断られてしまった。
追求したかったけど、叶さんと聡子さんの前では言えないことがあるらしい。
あたしは大人しく待つことにした。

夕食はあたしと聡子さんもお手伝いして叶さんのお宅でご馳走になった。
寝ていた來翔くんは黒髪にブルーの瞳でやっぱり少し和泉くんに似ている。
料理をしてる間來翔くんをあやしていた和泉くんは本当の親子に見えた。
微笑ましい光景と思えるのは和泉くんと逢えて不安が消えてくれたからかな。
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