王子なドクターに恋をしたら
何だろうこれ…頭がふわふわする。

家に帰っても、ご飯を食べても、お風呂に入っても、ぼんやりして遅くまでどこ行ってたのよ!とお小言を言ってる母の言葉も右から左へ…。

思い浮かぶのは和泉くんの笑顔。
あったかくていい匂いのマフラー。
頭の上に乗った意外に大きな手。
指切りした温もりと唇の感触。

思わず小指を見つめて自分の唇を寄せようとして、はた、と気付く。
和泉くんの事で頭がいっぱいになっちゃうなんてあたしどうしちゃったの!?

まさか、恋…しちゃったとか?
まさかまさか!?
いずれ和泉くんは大都会東京に帰ってしまうのに好きになったって報われない。

和泉くんは何故あたしと会いたいと思ったんだろう?
あたしみたいな田舎娘がただ珍しくて構ってみたかったとか?
もしかしたらたまたま会ったのがあたしというだけで特に意味はないのかもしれない。

だいたい逢ったばかりの女の子にあんな思わせぶりに小指にキスしたり普通する?
きっとあれは社交辞令というやつなんだ。
東京じゃあんなこと日常茶飯事なんだ、きっとそう。
だから、あんなことぐらいでときめいてちゃだめだ。

そう思うのに、やっぱり脳裏にはあの優しい笑顔が浮かんでは消え浮かんでは消え…
気付けばやっぱり小指を見つめ頬が熱くなるのを感じた。

そして否応なく自覚してしまう。
たった2回しか逢ったことない和泉くんに、あたしはあっという間に堕ちてしまった。

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