王子なドクターに恋をしたら
「そうなのねえ、あたしはまだご尊顔を拝んでないから見に行ってみようかな?」

お母さんが興味深げに話に加わってて、それだけはやめなよ恥ずかしいから、と心の中で突っ込んだ。
きっと話を合わせてるだけだろうけど、本気で見に行こうとしたら何としても阻止しなくては!
これ以上和泉くんが困らないように、早くみんな噂をやめてくれればいいのにと思う。

そんなこんなで、あっという間に閉店時間の午後7時。
お店の片づけを終えて、早く出かける支度しないと!と、思ってると、閉店した店にふらりと一人お客さんが入ってきた。

「あ、すいま…」

閉店時間です。という言葉が出る前にそのお客さんを見て固まった。

「こんばんは。ちょっと早く来ちゃった」

にっこり笑った背の高い彼を見上げて目をぱちくりしてしまう。

「い、和泉くん」

明るいお店のライトが和泉くんを神々しく浮かび上がらせる。
3度目にして、初めて明るいところで和泉くんを見た。
男らしい顎のライン、スッと通った高い鼻、口角の上がった薄い唇。
暗がりで見えた印象そのままに今度は色がはっきりと見える。
つやつやの栗色の髪白い肌。そして、淡いブルーの瞳。
< 20 / 317 >

この作品をシェア

pagetop