王子なドクターに恋をしたら
「あたし、おうちで待ってるから。…大人しく待ってるから、早く行って」

心配ないと、笑いかけ和泉くんの背中を押した。
振り返った和泉くんはまだ何か言いたそうだったけど、ポケットから鍵を出すと「必ず帰るから家で待ってて」と言い残し、先生たちと走って行ってしまった。

外へ出ると、駆け出していった和泉くん達が向かった病院前では救急車の赤色灯が点滅していた。
サイレンも聞こえるからまた救急車が到着するのかもしれない。

どうか、患者さんたちが助かりますように。
和泉くんどうか頑張って。

相馬先生なら和泉くんと二人で助け合って患者さんの命を救うんだろう。
あたしには病院内に消えていく和泉くんの背中にエールを送るしかできない。

病院を横目にあたしはレジデンスに戻った。
誰もいないガランとした部屋。
洗練されたおしゃれな部屋なのに一人でいるとすごく寂しさを感じる。

和泉くんは今頑張ってるのにあたしは何も出来ない上に早く帰ってきてとワガママなことを思ってしまう。
あたしは和泉くんの側にいてはいけないのだろうか?

『君は、高槻に何を与えられる?』
幸田先生の言葉がよみがえる。
『待って和泉くん』相馬先生の悲痛な叫びがこだまする。
悶々と思いを巡らせて眠れぬまま夜が明けていた。

和泉くんは帰って来なかった。

< 241 / 317 >

この作品をシェア

pagetop