王子なドクターに恋をしたら
「心配してくれるのは有難いですけど、大きなお世話です。あたしは一生和泉くん意外に恋はしません。例え離れ離れでも心は繋がってるんです。どんなに周りが引き離そうとしても絶対別れませんから!何を言っても無駄ですよ!」

ふんと鼻息荒く宣言すると顔を引きつらせた黒崎先生がぽつりと呟いた。

「なんか、フラれた気分だな…」

「え?なんて言いました?」

聞こえなくて聞き返したけどいいやと頭を振って黒崎先生は答えてくれなかった。

「ま、あいつにはお嬢ちゃんくらい頑固者の方がお似合いかもな」

「はあ?頑固者ってなんですか!そこは一途と言って下さいよ!」

「ははっ!一途か、確かに。こんなに思われて高槻は幸せもんだな」

ハハハッと大きな声で笑われた。
真面目に言ってるのにそこ笑うとこですか?黒崎先生の笑いのツボってわかんない。
でもいけ好かないパワハラ上司だと思ってた黒崎先生は気さくで話しやすくて和泉くんが慕うのも分かる気がする。

「寂しい思いさせてる詫びに反対する奴がいたら俺が協力してやるよ。そんな奴もういないだろうがな。じゃ、また来るわお嬢ちゃん」

ポンポンとあたしの頭を叩いてニッと笑った黒崎先生が翻す。

「千雪です!」

「は?」

「あたし、お嬢ちゃんじゃありません!松本千雪って立派な名前があるんです!」

あたしはもうすぐ25歳になる立派な大人の女性なんだ。
なのに黒崎先生は何度訂正してもお嬢ちゃんとあたしを呼ぶ。
子ども扱いされてるようで面白くない。

「…そうだったな。じゃ、千雪、またな」

初めてあたしの名前を呼んで、ふっと笑った黒崎先生は後ろ手に手を振ってお店を出た。
ぶるっと震え襟元を閉めて、背中を丸めて帰って行く。
東京の人にはこの北国の寒さは堪えるようだ。

「ふふ…」

その後ろ姿を見送り思わず口元がほころんだ。


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