王子なドクターに恋をしたら
「た~だいま~」

誰もいないリビングに電気を点けた。
和泉くんがドイツに行くことになって、あたしは実家を出てこの和泉くんの一軒家に一人で住むことに決めた。

「さぶさぶ…」

ひんやりした空気の中、暖を求めて急いでストーブをつけてはり付くように座り込んだ。

上を向けば壁には思い出の写真たちが飾られていて和泉くんの笑顔と目が合った。
二人で決めた家具、遊びに行ったときに買った雑貨達。
ここは二人の思い出がいっぱいある。
寂しくないと言ったら嘘になるけど、あの東京のレジデンスに比べたら暖かみがあって居心地がいい。


去年の秋ごろ、ここにお兄さん家族が遊びに来てくれた。
あの時、挨拶もせず突然帰ったにも関わらず叶ちゃんは変わらず仲良くしてくれた。
來翔(らいと)くんは一回り大きくなっていてあたしの事を覚えていてくれた。
ちゆ~と抱き着いてくれた時には涙が出るほど嬉しかった。
生まれたばかりだった弟の陽飛(はるひ)くんは6カ月になりあんなに小さかったのに丸々と太ってちょこんとおすわりしてる姿がめちゃくちゃ可愛かった。
相変わらず神々しいほど美しいお兄さんの流星さんは初めて和泉くんの家に来たからか興味深げに家を見回していた。
叶ちゃんも気に入った様子でニコリと笑う。

「素敵なおうちね」

「そう?」

「和泉にしては暖かみがある。あいつのセンスではないな、ほとんど千雪さんの趣味だろう?」

「え?そうですか?一応二人で家具とか決めたんですけど…」

「あいつああ見えて荒んでるからな」

ククッと笑うお兄さんに叶ちゃんも驚いてあたしと目を合わせ目を丸くした。
それ、黒崎先生も言っていたな…。
叶ちゃんに和泉さん荒んでるんですか?って聞かれたけどあたしも知らない。

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