王子なドクターに恋をしたら
笑い出す黒崎さんは今までと毛色が違うと意地の悪い言葉を千雪に聞かせるから焦った。
僕の女性遍歴を多少知ってる黒崎さんにこれ以上おかしなことは言われたくない。

考えてみれば千雪には自分の本性を隠してきた。
嫌われないように悟られないように必死で隠して猫を被って自分のいい所だけを千雪に見せた。
自分の本心を認めたくないのは自分の過去も関係してると気付く。
薄情でわがままな僕の過去を知ったら千雪はどう思うだろう?
自分の心をさらけ出したら誰もが僕から背を向ける気がする。
僕は千雪に背を向けられるのが怖いんだ。

僕の周りにはなんでこんなに自分勝手な人が多いんだろう。
黒崎さんに、看護師達、そして自分。何も悪くない千雪を傷つけてしまう。
元カノの存在まで匂わされて自分の事を差し置いて憤りを感じた。
本来の生活圏であるこの東京にいると僕が必死に隠してきたものが周りから綻び始める。

千雪を引き留めておきたい。
何より自分が安心したくて千雪に迫ったら止められ、僕の問題が解決するまでお預けとなった。

うだうだと悩んでる場合じゃないな。
このままだとほんとに千雪に愛想を尽かされてしまいそうだ。
実はドイツからの選考の結果がもう出ていた。
なのに今でも僕は迷っている。もう時間が無い。
もうすぐ決断の時が来ると予感した。
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