王子なドクターに恋をしたら
…………
「遅いな、和泉くん…」
約束の時間はとうに過ぎ、展望台にいた人も散歩してた人ももういなくなってしまった。
空にはぽっかり半月が浮かび静か過ぎて少し遠いはずの波の音が聞こえるような気がした。
なにか、あったのだろうか?
斗浦部には到着したって言ってたから近くまで来てると思うのだけど、叔父さんの用事に時間がかかってるのだろうか?
それとも来る途中で事故にあったとか?
まさかね?
何時間か前に救急車とか消防車のサイレンが聞こえたからそんなことをつい思い浮かべて頭を振った。
和泉くんが事故に合うわけない。
どちらかというと和泉くんはお医者様だから事故に合った人を救う方だ。
もしやほんとにそれで来れないとか?
仕事じゃなく休暇で来てるはずだけど、和泉くんなら目の前で事故に遭遇したらほっとけるわけないよね。
緊急手術にでもなったらあたしに連絡する暇なんてないだろうな。
頭の中でぐるぐると考えながら頭をもたげた。
メールがあるのだからメッセージを残して帰ることも考えたけど、感動の再会はやっぱりこの展望台でしたかった。
手すりに頭を付けると冷たくて気持ちいい。
なのに足元はぐるぐると渦を巻いてるようで立ってられない。
手すりにしがみ付くようにしてあたしは何度もつぶやいた。
「逢いたい…逢いたいよ…和泉くん…」