お見合いは未経験
「その顔、すごく可愛いって、分かってる?」
「え?」
やっぱり…自覚なかったか。

「そんな顔で他の奴とか見たら、絶対ダメだよ。」
「ありえないです。」
これで、無自覚…。

ランチを終えた後、貴志は真奈をマンションに案内した。
この辺りは高層マンションはない。
もともと商業地ではなく、住宅地だからだ。

貴志が住んでいるマンションも低層ではあるが、それぞれの部屋のドアが個別になっているため、住民同士が顔を合わせずに済む仕組みだ。

榊原トラストがファミリー向けに売り出したものなので、中は1人では使い切れないくらい、広い。
「なんか、以外です。」
「ん?」
「貴志さん、高層マンションにお住まいなイメージだったので。」

「ああ、このマンションはコンセプトを僕がリクエストしたんだ。プライベートを守れる設計になっているんだよ。」
「そうなんですね。」
「高層マンションもあるけど……。」
「いいえ。とても贅沢な造りで素敵です。」

部屋の中に案内して、リビングに連れていくと真奈は緊張した様子だった。

「真奈、コーヒーと紅茶、どっちがいい?」
   
「あ、すみません。私がします。」
「じゃ、一緒に選ぼう。」

こっちがコーヒー、とカプセルのケースを開けて見せる。
こっちは紅茶、と紅茶のケースも開けて見せた。
綺麗に並べられたそれを見て、一瞬、大丈夫だろうか、と思う。
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