お見合いは未経験
真奈、引かないか?
整えすぎてしまっていると、たまに女性にはぎょっとされることがあるので。

けれど、真奈は気にすることもなく、真剣に悩んでいるだけだ。
「どっちもすごく綺麗ですねぇ。迷います。」

その様子に、貴志は安心する。
「また、来ればいいんだから、好きなの飲んだら?」
「紅茶にします。アフタヌーンティーブレンド。美味しそうです。」
「了解。」

あえてティーカップにはしないで、マグで入れた。
リモコンで、音楽をつける。

「あ、クラシックですか?」
「うん。結構好きで。」
「私も、好きな曲です。もしかして、コンサートとか行きます?」
「たまにね。なかなか時間がないけれど。」

あそこのコンサートホールはいい、とかこの楽団は良かった、という話で盛り上がる。
「はー、嬉しいです。こんなお話出来る人もいなくて。」

「ねえ?真奈?」
「はいっ!」
貴志が優しく名前を呼ぶと、真奈からは元気な返事が返ってきた。

貴志は眼鏡を外して、リビングテーブルの上に置いた。
ソファでキスをして、真奈をクッションに押し倒す。
「可愛い。真っ赤だ。」

最初は唇を重ねるだけ。
そして、だんだん深くしていった。
舌を絡めると、真奈からはほんのり紅茶の香りがする。
「…あ…」
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