お見合いは未経験
「どちらを選んでも後悔すると言ったのは、兄さんですよね。」
「そうだな。」
でも、後悔はさせない。

笑顔の貴広は、頼りがいのあるような、若干、背筋が寒くなるようなことを言う。

しっかり、使う、ということだろうな…。


本社ビルに寄ったあと、貴志は自宅マンションに戻った。
先週から、真奈が一緒に住んでいた。
本当は結婚式をしてから、とも思ったが、あまり待つことに意味がない気がして。

よく、あの小笠原家が許した、と思うが当主の言ったことは、案外、本音だったのかもしれない、と今は思う。

それとも、全てが計算のうちだったのか、今はもう分からない。
けれど、分からなくていい。

「ただいま。」　　　
家に帰ると、何か食事の用意をしていた様子の食べ物の匂い。
パタパタっとスリッパの音がして、エプロン姿の真奈が笑顔で出迎えてくれる。

「お帰りなさい。お疲れさま。」
あの時成嶋に、『家帰ると、電気ついててー、冬は家がほわっと暖かくて、料理が作られている』と言われて、そんないいものか？と、少し思ったが。
< 150 / 190 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop