お見合いは未経験
その数日後、訪問先からの帰りである。
「では、先に戻って資料を作成しています。」
「オレはもう1件回ってから、帰る。資料、帰ったら見るから、よろしくな。」

寺崎を先に帰したあと、次のアポの時間を確認すると、少し間が空いている。
    
先日の継承の案件については、実は榊原トラストに間に入ってもらったのだ。

トラストの開発部長は、飛び込み営業だった成嶋にも嫌な顔ひとつせず、会ってくれた。
新しいことも積極的に取り入れる会社とは聞いてはいたが、アポ1件取るのも苦労している営業マンにとってはありがたい。

銀行の系列だから、というのもあるのかもしれないが。

いや、むしろそれか…。

開発部長は会ってはくれたものの、そのクラスのディールはうちでは難しい、とやんわり断られた。

だよなー。
まあ、ダメ元ではあったので。

「ですよね。トラストさんだともっと大きいディールですよね…。」
「でもないんですよ。ただ、今回の案件は難しい。」
他にはないですか?成嶋さん?と聞かれて。

「まだ、紙ベースに落としてないものもありますけど…。」
ある程度、まとまっている案をいくつか話した。

すると、開発部長も興味は持ってくれたようで、結構熱心に聞いてくれる。
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