お見合いは未経験
「うーん、先ほどの件、うちでは難しいんですけど、うちと取引のある先では興味があるところもあるかもしれない。オープンにしてよければ、いくつか心当たりを当たってみましょう。」

「ホントですか?すごく助かります!」
「そのかわり、と言ってはなんですけど、いい話があれば是非また聞かせてほしいんですが。」

成嶋は少し考える。

「手の内全部ってわけにはいかないです。オレもそれでメシ食ってるんで。でも、頭はいつでも貸します。」

案件によっては有料ですけど。
部長も面白がって、ぜひ、と言ってくれた。

トラストが間に入ってくれるといいんだけどなー、他に行けそうな案件あるかなー、と考えながらエレベーターを降り、ロビーに向かうと、一際目立つ男性が歩いてくるのが見えた。

なかなかのイケメンで、秘書らしき女性も華やかだ。
役員か?にしても、派手だな…。
どっかで見たことある。

「あ…。」
思わず声が出てしまった。

榊原の兄ちゃんじゃん。

少し前に経済紙に載っていた。
どこのグラビアモデルか、という写りの写真で、榊原に似ているような、似ていないような、と思いながら見ていた。

それを読んだから、今回こんな飛び込みの営業をしてみようと思ったのだ。
会社の雰囲気は思った以上だったが。
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