お見合いは未経験
目が合うとにっこり笑ってくれたので、成嶋もつい、頭を下げてしまう。

てか、向こう、オレのこと知らねーじゃん。

そんなことは普段しないのだが、カリスマに引き込まれたというか。
と、笑顔の榊原兄がこちらにやってくる。

「えっと、すみません、失念してしまったんだけど、どこかでお会いしていました?」

榊原兄に柔らかい声でそう聞かれた。
凄腕と聞いているが、とんでもなく感じの良い人物だ。
ストレートではあるが、嫌味がない。

「いえ。すみません。私が一方的に存じ上げていて、つい、ご挨拶してしまったんです。」

榊原兄はくすっと笑う。
「お互い勘違い?」
「すみません。」

「君、どこの誰かな?」
さて、どう答えるべきか…。

「元、弟さんの同僚で、今はリサーチ&コンサルティングにいます。成嶋と言います。」
「へえ?そのコンサルの人がどうしたの?」
榊原が、緩く首を傾げる。

「実はこちらの開発部長さんにお時間を頂いて。お会いしていました。」
「まとまった?」

「いえ、ディールが小さくて無理でした。でも、持ち込みは歓迎と言ってくださって、さすがと思っていたところです。」
「銀行員?」
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