お見合いは未経験
「らしくないとよく言われますね。」
「うん。らしくないね。面白い。弟と同僚?」

成嶋が支店名を出すと、思い当たったようで、ああ、となった。
「帰るところかな?」

「移動です。」
「急いでいる?」

ん?もしかして、時間をもらえる?

「次の約束まで時間があるのでコーヒーでも、と思っていました。」
榊原兄がにっこり笑う。

「そつがない。好きだなそういうの。夏目さん。」
夏目さんは、側にいた秘書のようだ。

「30分でしたら、大丈夫です。」
「じゃ、成嶋くん。30分、僕とコーヒーはどうかな?」
「喜んで。」

トラストのCEOに時間もらえるとか、超ラッキー。ありがとう、榊原。

しかし、時間をくれた30分の内、20分が弟について熱く語る時間てどういうことかな?

なんだろう、この身内に対する愛の強さ。
身に覚えが…。

それは、自分のことだと思うのだが、
うーん、誰だろう……?と成嶋は首を傾げるだけで、心当たりが自分なのだとは、気づかないままなのだった。           
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