お見合いは未経験
「ただいま。」
「炯さん、お疲れさま。おかえりなさい。早かったのね。」
今日は私も早かったし、連絡くれたから鰻にしちゃった、と葵がはしゃいでいる。

「ビール飲む?」
「うん。頼むよ。着替えてシャワー浴びてくる。」

「はい。じゃ、準備しとくね。」
葵は鰻、とは言っていたが、テーブルを見たら、すでにつまめるものが何品か置いてあった。

早くシャワーを浴びてスッキリしたい、と思う。

炯が帰宅してシャワーを浴びるのは、スッキリしたいのも目的の一つではあるが、仕事から気持ちを切り替えることも目的の一つなのだ。

家に帰ると葵がいて、彼女も仕事をしているので、先に休んでいることもあるが、それでも、家に人がいることがこんなにもホッとするものだとは思わなかった。

無理はしないように、と言ってある。
それでも、葵はいつも炯に尽くしてくれていると感じる。

最近は週末も忙しくしていて、以前ほどゆっくりできないのも申し訳ないとは思っていた。
これで仕事を受けてしまったら、さらに忙しくなることも考えられる。  

炯がシャワーを出てくると、葵が冷やしたグラスとビールを持ってきてくれる。 
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