お見合いは未経験
「あの、私は失礼して、設営準備のお手伝いをさせていただいて、よろしいですか?」
真奈の声だ。
みんなが一瞬まごつく。
手伝わせていいのだろうか、という雰囲気。

しかし、真奈はさすがにそういう状況には慣れているようで、
「そのために参りましたので。」
と言って、表情を変えず頭を下げて、さっさと出て行った。

貴志はふっと笑みが溢れる。
あざやか過ぎだろ。
「お前の嫁さん、かっけー...」
「ですね。」
          
「あ、えっと、成嶋部長は信託の支店長はご存知かな。こちらが、今日の講師のコンサルティングの成嶋部長です。あと、渉外課を取り仕切っている次長の榊原です。」
支店長と、もう1人来ていた社員と、貴志は名刺交換をする。

誰だ?改めて名刺を確認すると営業マンのようで、肩書きは課長代理になっていた。
ひどく先程から見られている。
柏木...。
なぜ、僕を熱い目で見てくるんだろう。
こいつ、ヤバイやつじゃないよな。

「聞いたよー!榊原次長、先程の小笠原さんのお嬢さんと婚約してるんだって?」
支店長の明るい声が響いて、柏木とかいうそいつがびくんとする。

情報、早いな…。
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