お見合いは未経験
会社に帰ってきて、ふと、自分の携帯を見たら炯からのメールが入っている。

『お客様との食事がキャンセルになったから、一緒にメシ行こう。』

葵はつい、微笑んでしまった。
結婚したとはいえ、炯は忙しい。
意外と休日も仕事絡みで動いていたりして、なかなか2人でゆっくり過ごす時間がないのだ。

特に、今の会社に移ってからは、更に忙しそうに見える。

平日もお客様との食事や仲間との食事で、ほとんど家では食べない。
もちろん予想はしていたが、たまにこのようなお誘いがあると、嬉しくなってしまう。

炯のリクエストは、最寄り駅の炉端焼きの店だった。
現地集合で、早い方が先に注文をしておく、が成嶋家の今のルールだ。

葵が店に入ると、顔馴染みとなった大将が、奥の席を用意してくれる。
2人きりだと、炯が静かな席を好むからだ。
おススメを聞きながら、注文していると、炯がやってきた。

「お疲れ。」
「お疲れ様でした。」
ひと息ついたところで、最近どうか?という話になる。

「あ、今度炯さんのセミナー、私、行く事になりました。」
「どういうことかな…?」
「なんか、うちのエリアでもやるらしいです。セミナー。」
< 99 / 190 >

この作品をシェア

pagetop