極上御曹司と授かり溺愛婚~パパの過保護が止まりません~
 そして来てほしくなかった水曜日になり、朔也さんはイタリアへ行ってしまった。

 大学の講義前、ずらりと並んだ長テーブルに顔を突っ伏し、数時間前の別れを思い出していた。

 水曜の今日は午後からの講義で、十一時出発便の朔也さんのお見送りができた。

 別れのときは泣かないよう必死にこらえて笑顔で見送ったけれど、その後は込み上げてくる寂しさで号泣していた。

 あれから二時間以上経っているのにまだ気分は沈んでいて、彼を思い出すと涙が出てくる。

「はぁっ」

 顔を上げて鬱々した気持ちが思わず口から出たとき、あやが隣に座った。

「今日は休めばよかったのに」

 朔也さんの出発の日だと知っているあやは、心配そうな瞳を私に向ける。

「家にいたらずっと考えちゃいそうだから」

「ここでも一緒でしょ」

 あやは苦笑いを浮かべて事実を突いてくる。

「あたり……先生の声なんてきっと頭に入らない……」

「今日は帰ったら?」

「……ううん。ちゃんと勉強する。朔也さんがいなくてもしっかりしなきゃ」

 部屋のベッドでなにも考えずに眠りたい誘惑にも駆られるが、そんなことをしても四ヵ月は乗りきれない。現実逃避をしてはいけないのだ。

「あや、ありがとう。彼がいない間もやることはたくさんあるし、帰国したときに褒めてもらえるようにがんばる。ちょっと見ない間に、綺麗になって成長したねって言ってもらえるように」

「さすが美月! あんな素敵な婚約者がいて、ホントうらやましいわ。四ヵ月なんてすぐ過ぎるわよ」

 あやは私の背中をポンポンと叩いて、励ますように笑顔になった。
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