罪か、それとも愛か
恋とは呼べない
「ねぇ、琴羽。一緒にパンケーキ食べに行かない?気になるお店が出来たんだ」
萌音が講義の途中でそっと琴羽に声をかけた。
「パンケーキ?どんなお店?」
「生クリームが山盛りでね、フルーツもゴロゴロ。写真映え間違いない感じ。見て」
こっそり萌音はスマホのサイトを見せてくれる。写真だけで圧倒される色鮮やかなパンケーキだ。
「わ、美味しそう。でも、いいの?五嶋くん誘わなくて」
「ピンクと白のふわふわ女子向けのお店なの。零次じゃ浮いちゃうから」
高校までは、ずっと『一条の令嬢』として周りからは距離を置かれていた。夏姫以外に親しくおしゃべりしたりしなかった。
だからこんな感じは新鮮だ。誰も『一条』のことを知らない大学生活は、ほんのわずか年相応の女の子になれて、『一条』から解放される、心の緊張を解く貴重な場所だ。
本当は今日もいぶきの元に行く予定だ。
いぶきには、『今しかない学生生活第一。遊びの予定は優先しなさい』と言われている。このところ仕事ばかりだったので、たまには萌音に付き合いたい。
それに、話題になる店のリサーチも出来る。今の若い女の子たちにはどんなものが流行っているのか、これから流行りそうなものは何か。ビジネスチャンスの卵が見つかるかもしれない。
大学では『一条』から解放されていると思いながらも、ビジネスのことが完全に頭から離れていない自分に気づき、思わず呆れる。
迎えの黒川にはメールしておけば良い。
「行く!パンケーキ、楽しみ」