罪か、それとも愛か
その時、カウンターの中にいた黒服の若い男がコーヒーを運んできた。
やや乱暴に置かれたコーヒーは少しソーサーにこぼれた。
黒服の男は悪びれる様子もなく、それどころか琴羽に鋭い視線を投げかけてから、再びカウンターの向こうへと戻って行った。
「私ばかり一方的にごめんね。琴羽ちゃん、コーヒーどうぞ」
セピア色の液体はソーサーにこぼれ、カップを持ち上げたらポタポタと滴りそうだ。
琴羽はカップだけを持ち上げることを諦めて、ソーサーごと手に取った。
すると、狂気と期待で愛紗の目に光が増す。口角はさらに上がった。
どう考えても、このコーヒーに何か仕掛けがあるのだろう。睡眠薬でも入っているのかもしれない。
「愛紗ちゃん。
貧乏から抜け出したいならどうして自分の力で努力しないの?
『医者の妻』になって贅沢三昧だなんて、結局あなたもラクしてお金を手に入れることしか考えていない。
馬鹿にしないで。
努力しないで手に入れられるものなんてないのよ。冬輝が医師になるためにどれだけ頑張っているか知ってるでしょ?
そんなあなたに冬輝は渡せない」
きっぱりと告げた琴羽の強い態度が、愛紗の気持ちを逆撫でする。