罪か、それとも愛か
「偉そうにっ!恵まれているあなたに何がわかるっていうの!」
「恵まれてる?私が?
目の前の貧乏や不幸で目が濁ってるから、わからないでしょうね。
愛紗ちゃんにはお母さんがいるんでしょ?お兄さんも。
私がどんなに欲しくても決して手に入らないのよ、自分だけの母と兄なんて」
「欲しいならくれてやるわ。貧乏が染み付いたボロ切れのような母親と、父親に似て楽して遊ぶことしか頭にないクソ兄貴なんて。
さぁ、飲め。コーヒーを飲め!」
愛紗は目玉をむき出して、ついには叫んだ。そんな愛紗の目の前で琴羽は、コーヒーのカップを静かに傾けた。
「あ、おい!お前、何してくれてんだ!」
カウンターの向こうでこちらを見ていた黒服の男が、血相変えて駆け寄ってきた。
琴羽のカップのコーヒーは、セピア色の一筋の線となりテーブルへと流れていく。テーブルを伝い、さらに薄汚れたタイルの床へと落ちていった。
「コーヒーなんて要らないわ。
冬輝が別れたいと言ったなら、もう、冬輝にも私にも近づかないで。
話は終わり」
最後にカップまで床に落とす。カップは派手な音を立てて、粉々に割れた。
「このやろう!!羅舞、殴っていいか?」
黒服の男が逆上して顔を赤らめながら、愛紗に尋ねた。
「殴る?そんな優しいこと言わないで。死んだ方がマシと思えるような目に遭わせてやってよ。
コイツがいるから、水上くんはアタシと別れたいなんて言ったのよ?
アンタなんていなくなればいい!」
愛紗が怒りもあらわに叫んだ、その時だった。