罪か、それとも愛か
ホテル入口ロビーには黄色を基調とした見事なフラワーアレンジメントが飾られ、訪れた人々を迎えていた。

その花をじっと見つめている、白いドレスの少女。
花音だ。
その顔を見たとたんに、琴羽の中のスイッチが入る。冬輝へのモヤモヤは即座に押し込み、ピンと緊張の糸をはる。

琴羽はそっと花音に歩み寄り、熱心に見つめている視線の先を追った。


黒いシャツに黒いパンツ、黒いエプロンをしたフローリストと思われる男性が一人で花の微調整をしている姿が、そこにあった。

「あの顔、覚えておいて、琴羽」

花音は視線をフローリストに向けたまま、小さくつぶやいた。
理由など言わない。言わなくも同じものを見ていれば琴羽も気づくとわかっているから。

琴羽は注意深くフローリストの男性を目で追う。

もしかするとトラブルがあったのかもしれないが、本来ならば、招待客が来るまでには完成させるべきだ。この時間でもまだ調整している様子はあまり良い印象ではなかった。
フローリストの男性もチラチラとロビーに現れる客を気にしながら、黙々と作業をしている。



「花音、見つけたぞ。一人でフラフラしちゃダメだ。
琴羽、今日は一段とセクシーだな。よく似合ってる」

花を見ていた琴羽と花音は、拓人に声をかけられた。拓人の背後には黒川マリアも護衛として控えている。

拓人の声に一瞬フローリストの男性がこちらを見た。
だが、スッと琴羽は体の向きを変えて背を向け、拓人と花音の姿を彼の視線から遮り、この場を後にした。

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