罪か、それとも愛か
「さっきの五嶋くんだっけ?。琴羽の婚約者候補に名乗りをあげるって息巻いてた」

「…気になる?」

「ちょっと頭をかすめた。あいつの代わりって思ったほうがいい?」
「冬輝の代わりはいない」

ほんのわずか、湧き上がった悋気もこの琴羽の即答で見事に霧散するのだから。

ーー俺も単純だよな。

「つながりたい。冬輝の熱を分けて」
「……わかった」


形にならない思い。体を重ね、熱を共有し、だれより近くにいて、感じる思い。


冬輝にとって琴羽は自分の一部ともいえる大切な存在。
琴羽は冬輝にだけ甘えてくれる。
肌を重ねれば、貪欲に求めてくれる。

それが愛おしくてたまらない。

琴羽を思うこの気持ち。これは愛だ。

だが、愛を言葉にして伝えれば琴羽は逃げるだろう。
己の人生を母への贖罪と位置付ける琴羽は、愛を恐れている。

だから言わない。
言わないけれど、感じてほしいと切に願う。

形や言葉にする意味もないほど、なにより一番大事な思いを。

きっと互いを失えば生きていけない。
だから。
決して離れることなどないように、いっそ溶けて一つになりたい……



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