罪か、それとも愛か
ホテルが用意してくれた部屋は高層階にあった。
外では、まだパトカーや救急車の赤いランプがせわしなく光っている。だが、ここまでは光は届かない。いつしか野次馬も増え多くの人がごった返しているが、高層階の部屋はそんな雑音も無縁だ。
騒ぎから少しでも離れて心落ち着かせてほしいというホテル側の気遣いだった。

冬輝は部屋の暖房を入れ、浴槽にお湯を張る。
勢いよく温かいお湯が浴槽に流れていくのをぼんやりと見つめた。

琴羽が無事だったことは何よりうれしい。
だが、少し引っかかることがある。

ーー五嶋と呼ばれていたあの男は誰だ。

琴羽とあんなに親しい男がいるなんて知らなかった。

その時。

浴槽を覗き込んでいた冬輝の背中に、琴羽がしがみついてきた。

「…大丈夫か。風呂、すぐに入れそうだぞ」
「……」

抱きついてきた琴羽の体はわずかに震えていた。
冬輝は体を反転させて、琴羽をぎゅっと抱きしめる。真っ赤なドレスもそのままに、琴羽はうるんだ瞳で冬輝を見上げていて。

ーー反則だよな。こんなの。

愛おしさがこみあげてくる一方で五嶋の姿が頭をかすめる。

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