罪か、それとも愛か
女医の娘
冬輝と夏姫
※※※
18歳の冬。琴羽は医学部を目指す受験生で、女医の娘だった。
その頃の琴羽が描く未来には、両親と同じ医師への道以外の選択肢はなかった。
授業が終わり予備校の建物を出ると冷たい夜風が疲れた目にしみた。悲しくもないのに、ぶわっと涙がにじんで視界がゆがむ。
涙を拭おうと足を止めたその時だった。
「マジ?どうだった???」
急に耳に飛び込んできた大きな声に振り向くと、琴羽と同じ高校の制服を着た男子が数人集まって騒いでいた。
「温かかった」
「えー?それだけ?もっと、エロい感想はないのかよっ」
「ま、一足お先に大人になりましたってことで」
「チキショー!受験生のくせにエッチするなんて!」
どうやら三人のうちの一人が、女の子と寝たらしい。
ワイワイと盛り上がる彼らの傍らをすり抜ける。
男女交際に興味はないが、「大人になった」と友人たちにマウントをとる男子の自慢げな表情だけ、やけに鼻についた。
ーーくだらない。そんなことくらいで大人になれるなら苦労しない。
大人になるってもっと。
もっと……何?
大人の指標って、何だろう。
1日中酷使した頭は、勉強以外の思考を遮る。
涙を手で雑に拭い、こぼれないように空を見上げれば、都会の夜空でも星が見えた。
冬の夜空は明るく輝く星が多くて好きだ。
ーー冬に輝く星か。
冬輝なら琴羽の満足のいく答えを導いてくれるに違いない。
不意に冬輝の顔を思い出した自分に笑いながら、琴羽は予備校隣りの駐車場に向かった。
18歳の冬。琴羽は医学部を目指す受験生で、女医の娘だった。
その頃の琴羽が描く未来には、両親と同じ医師への道以外の選択肢はなかった。
授業が終わり予備校の建物を出ると冷たい夜風が疲れた目にしみた。悲しくもないのに、ぶわっと涙がにじんで視界がゆがむ。
涙を拭おうと足を止めたその時だった。
「マジ?どうだった???」
急に耳に飛び込んできた大きな声に振り向くと、琴羽と同じ高校の制服を着た男子が数人集まって騒いでいた。
「温かかった」
「えー?それだけ?もっと、エロい感想はないのかよっ」
「ま、一足お先に大人になりましたってことで」
「チキショー!受験生のくせにエッチするなんて!」
どうやら三人のうちの一人が、女の子と寝たらしい。
ワイワイと盛り上がる彼らの傍らをすり抜ける。
男女交際に興味はないが、「大人になった」と友人たちにマウントをとる男子の自慢げな表情だけ、やけに鼻についた。
ーーくだらない。そんなことくらいで大人になれるなら苦労しない。
大人になるってもっと。
もっと……何?
大人の指標って、何だろう。
1日中酷使した頭は、勉強以外の思考を遮る。
涙を手で雑に拭い、こぼれないように空を見上げれば、都会の夜空でも星が見えた。
冬の夜空は明るく輝く星が多くて好きだ。
ーー冬に輝く星か。
冬輝なら琴羽の満足のいく答えを導いてくれるに違いない。
不意に冬輝の顔を思い出した自分に笑いながら、琴羽は予備校隣りの駐車場に向かった。