罪か、それとも愛か
「待て、琴羽」

立ち上がろうとした琴羽を止めたのは冬輝だった。

「五嶋商事の御曹司が今の条件を飲むって言ったら?可能性はあるだろ。
五嶋は琴羽の能力が欲しいんだ。子供だって歓迎するだろう。自分の血を継いだ子供が一条の跡継ぎになる可能性があるなんて知ったら喜んで食いつくと思うぞ。一条家に絡まないなんて最初は言っても、自分の子供の為って理由つけて堂々と首を突っ込んでくるだろうな」
「…何が言いたいのよ、冬輝」

「お前の出した条件の全てを満たせるのは俺だけじゃないかってこと。
お前の意思で、俺を利用しろ」
「……ッ!?」

琴羽は息をのむ。諦めさせるために無理難題を吹っ掛けたというのに。まさかそれがかえって冬輝の気持ちに火をつけたらしい。

「俺にしておけ。一番無害だろ」
「バカ言わないで。冬輝の人生を大きく狂わせてしまう。『一条』の家名は冬輝には荷が重すぎるでしょ。
冬輝は好きな女性と幸せな結婚して、洸平さんや柊子さんにかわいい孫の顔を見せてあげて」

「それは無理だ。だって仕方ないだろう。
好きな相手は結婚する気がないし、俺自身もまだまだ未熟だって分かってる。
だけどほかの男に頼るくらいなら俺を利用してほしい。
琴羽が相手じゃないなら、俺も一生結婚なんてするつもりない。両親が孫の顔を見ることなんて永遠に来ない」
「冬輝…」

たぶん、初めてだ。これほど激しく琴羽が欲しいと求められたのは。
真面目で穏やかな性格の冬輝なりの一生懸命で熱烈な告白に、琴羽は言葉を失った。

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