罪か、それとも愛か


二人だけで残されて、琴羽は大きくため息を一つついた。

俺を利用しろと、冬輝は言った。琴羽が相手じゃなければ一生結婚なんてしないとも。

ーー冬輝には、結婚して愛する家族と幸せな家庭を築いて……みたいな当たり前の幸せを手にしてほしかった。
巻き込みたくなかったのに。


だが。
心の奥にしまい込んだ本心が遠くから叫んでいる。
それは欺瞞だ、と。
本当は一番近くにいて彼を独占したい。肌を合わせて彼の温もりが欲しい。産むなら絶対冬輝の子供がいい。
聞こえる本心は彼への慕情で満ちていた。


「私は、冬輝に幸せになってほしい」

二人きりになり、最初に声を出したのは琴羽だった。

「俺の幸せって何だと思う?」
「…いい人と結婚してかわいい子供に囲まれて暮らすことじゃない?」
「じゃあ、想像して。琴羽はそれを一番近くで見ているんだ。どう思う?」

「どうって…」

冬輝が、琴羽じゃない女の子を好きになって、結婚する。真面目で優しい冬輝だから奥さんのことを大事にするだろう。子供が生まれたら、いいパパになるに違いない。面倒見のよさは琴羽が一番よく知っている。

そんな冬輝を、琴羽は近くで見守っていく。
祝福して応援する。

そんなこと、できるだろうか。


そんなこと、できるとは思えない。


ーーあぁ、寒い。体だけでなく心まで凍ってしまいそうだ。


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