罪か、それとも愛か
鳴らないスマホの待ち受け画面を見つめながら、琴羽は首を横に振る。

「もう、霊安室にいるのかもしれないわ。洸平さんも柊子さんも電話なんてしてるヒマないのよ」

一番最悪のシナリオを自ら口にして、琴羽は静かに父を見た。

「ママのときみたいに」
「琴羽!!」

翔太の手からスマホが滑り落ちる。琴羽の顔は陶磁器のように真っ白で血の気が全くない。まるで自分こそが死人のようだ。

「私、ママを悲しい気持ちのまま死なせてしまった。医師になることもできず、ママの望んでいた人生を歩めなかった。それは私の一生消えない罪。
冬輝は私を支えると言ってくれた。彼の人生を犠牲にして、一条の為に利用することを許してくれた。
私なんかの為に、冬輝は幸せになれるはずの人生を棒に振ってしまった。
……神様、罰なら私に与えて。罪を背負うべきなのは私なのに」


翔太は、驚きのあまりヒュッと息をのんだ。

翔太の前ではめったに弱さを見せない琴羽。まさか、これほど心に傷を負って自分を責めて生きているなんて知らなかった。とっくに母の死から立ち直っているものだとばかり思っていた。

「琴羽、それは違う。お前に罪なんてない。
ママは琴羽が大好きで、いつも琴羽の幸せを一番に考えていた。ちょっとくらいの反抗なんて可愛いものだって思ってたよ。
だからママは絶対、琴羽が選んだ人生を応援してる。
それに冬輝は運が強いんだ。あいつはまだ柊子ちゃんのお腹にいる時も交通事故に遭ってる。それでも元気に生まれてきたんだ。あいつの強運を信じよう」

翔太は優しく娘を抱きしめた。その体は驚くほど冷たい。血が通っているのか心配になるほどだ。
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