罪か、それとも愛か
「琴羽が医者になるならその病院を任せるつもりだったけど。
ま、仕方ない。琴羽の婿で医者をもらうか」

「医者と結婚?」


一瞬、琴羽の頭を冬輝の姿が掠めた。だが、慌ててその姿を掻き消す。


ーー馬鹿ね、冬輝は愛紗ちゃんのものよ。


「冗談だよー。
ま、病院の経営を任せられるくらい勉強しろよ。
結婚なんてやだなー。琴羽までいなくなっちゃったら、俺、終わる。泣いちゃうぞ」

「じぶんで言い出したことなのに。パパったら」

泣くふりをした父を琴羽は笑い飛ばした。


ーー結婚相手に医者と聞いて冬輝が浮かぶなんて。


冬輝が側にいてくれるのは、母を亡くして心の均衡を保てなくなった琴羽を心配してくれているから。
間違っても恋愛感情ではない。
冬輝の恋人は愛紗なのだから。


琴羽は手にした慶長大学の合格通知を見た。


これで、医学の道を行く冬輝とは袂が分かれる。
このまま、冬輝に甘えていちゃ駄目だ。これからは、自分の力で元気になって前を向いて行かなくちゃ。



18歳の冬。突然、女医の娘としての時間は終わった。琴羽は一条の名を背負い、前に進んでいくことに決めた。

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