罪か、それとも愛か
ランチタイム。
毎日のように3人で一緒に学食に行く。

今日の琴羽は学食で一番安いかけうどん。食の細い琴羽にとってはそのシンプルさが助かっている。
萌音もうどんだ。リップが落ちるのを気にして一本ずつ食べていた。
五嶋はガッツリと定食だが食べこぼしが多く、彼のテーブル周辺は乱雑になっている。



「俺これからバイトなんだ。だりぃーな」

五嶋が心底めんどくさそうにぼやく。

「私もこれからバイト」
「琴羽のバイトって何してんの?」

定食を完食し、食べ散らかした後を片付けながら五嶋が尋ねた。

「事務的な仕事。資料集めとか、コピー取りとか」
「そうなんだ!だからあんまりオシャレしなくてもいいんだね」

萌音が、綺麗に巻いた髪の毛先を指でさらにくるくると巻きながら言った。
萌音はオシャレに余念がない。

一方の琴羽といえば化粧っ気ゼロ。
顔を占領している大きな黒縁の眼鏡。ただ伸ばしているだけの真っ黒でボサボサの髪。色の褪せたデニムパンツに、オーバーサイズのシャツを羽織っている。
地味極まりない琴羽の服装に、萌音がため息をつく。

「ね、今度一緒に渋谷にでも行かない?私が見立ててあげるよ。琴羽、磨けば光ると思うんだよね」
「ありがと、萌音。
今日のピアス可愛いね。この間見せてくれた雑誌の写真のやつじゃない?」
「そうなの!モデル仲間のあいだで今流行ってるブランドのなんだ」

琴羽はそれほどファッションには興味がない。
必要な時は一条家御用達の世界的デザイナーが、TPOに合わせて飾り立ててくれるから。

それは大学に通う時でも、だ。

モデルとしてファッション業界に在籍する萌音ですら気づかない。
とにかく目立たぬようにをコンセプトに、琴羽の身につけている地味極まりないデニムパンツもシャツも、世界的デザイナーJYUNNZO SUZUKIの手によって緻密に計算されたコーデだということを。
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