罪か、それとも愛か
車は、都心の巨大なビル群の中でも一際大きく、個性的なデザインの超高層ビルの地下駐車場に入った。
『一条タワー』と呼ばれるそのビルは高層階に一条商事の本社機能を置き、中層階は様々な一条グループのオフィスが入り、低層階にはクリニックやレストランがテナントとして入居している。


琴羽は黒川と共に車を降りると、駐車場から高層階直通のエレベーターに乗り込んだ。

エレベーターが目的のフロアに着く。
琴羽は黒川と共にフロアの一番奥の部屋に入った。


「…ですから、その内容では」


いぶきが電話中だ。黒川と琴羽に気づいて軽く手を上げる。

琴羽はいぶきに小さく頭を下げてから、その部屋の奥へと向かった。


シャワーに洗面台。仮眠用のベッドがあるその部屋は、拓人やいぶきが忙しくて帰れない時に使っている部屋。
琴羽は洗面台で顔を洗って軽く化粧をし、髪を綺麗に束ねた。それから、備え付けのクローゼットに吊るしてあったスーツを身につける。

ここまで、わずかに10分。
あっという間に、学生から“秘書”へと変貌する。
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