罪か、それとも愛か

「さぁ、いぶき先生。何からやりましょうか」


琴羽がブラウスの袖をまくった。
現れた腕に、無数の青いあざ。打ち身の跡にいぶきは顔をしかめた。


「女の子なのに、そんなにあざを作って…やりすぎよ、黒川」
「琴羽さん、スジがいいんです。教え甲斐があるんで、マリアがつい本気出しちまう。
すみません」

黒川と黒川の妻マリアは、アメリカでシークレットサービスの養成所で学んだ本格派だ。琴羽は幼い頃からその二人に護身術の稽古をつけてもらっていた。

「黒川にそこまで言わせるなんて、琴羽ちゃんすごいなぁ。くれぐれも大きな怪我しないように気をつけて。
さて。
黒川は、開店祝いの花を手配して。琴羽ちゃん、こっちの書類をコピーして。それが終わったら、営業三課にお使いを頼むわ」

早速いぶきが指示を飛ばす。その指示を聞いて、黒川が思い出したように言った。

「そうだ、琴羽さん。花には詳しいですか?」
「お花?いえ、あまり詳しくは……」
「葬儀用の花にしても宗教によって異なりますし、お祝いも内容によって送る花は変わってきます。TPOに合った花の種類を覚えてください。あと、花言葉なんてヤツも会話の糸口になったりしますから覚えていて損はないですよ」
「わかりました」

黒川は自分の知識やスキルを惜しげもなく琴羽に伝授してくれる。今度おすすめの花の本を渡すといって、黒川はいぶきの指示をこなすために消えた。

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