ひとりぼっちの王子
九条 時雨side
「━━━━━━空羅、久しぶり。
また痩せた?」

愛しい空羅が目の前にいる。


本当は今すぐ抱き寄せ、連れ去りたいのに……空羅はしっかり若王子の手を握っていた。

若王子も空羅の頭を撫で、
「大丈夫。そばにいるからね」
とあやすように話しかけている。

洗脳されているとはいえ、あまりの状態に胸が潰れそうだ。


「うん。少し…でも元気だよ。
しーちゃんは?
晴ちゃんも、元気にしてる?晴ちゃんの体調は?」



こんなときでも自分より俺や晴加を心配する優しさ、柔らかい声、綺麗な目もあの日の……幸せだったあの日のままなのに、しっかり若王子の手を握ってるその事実や首についているキスマークが、若王子のモノだと言われてるみたいだ。

「晴加は元気になったよ!恋人もできたらしい。
空羅……
空羅に、話しておきたいことがあるんだ」


最期にどうしても全てを話しておきたかった。




そう━━━━真実を。
< 42 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop