今夜はずっと、離してあげない。



言葉を濁した私にどこか怪訝そうな顔をしていたけど、それ以上喋る気がないことを悟ったのか、違う話題へと移ってくれた。




「今日の夕飯は素麺な」

「素麺!ネギとみょうが入れたいです!」

「はいはい。……余ったら豚バラとなすのつけ素麺にするか」

「えっ、なにそれ美味しそうです」




他愛もない話で盛り上がって。

ふたりで笑い合う。



……もう、わかってる。

一線を引いているのは、入り込ませないようにしているのは、私の方なんだってこと。


彼に聞けば、きっとすんなりと答えてくれるだろう。


なぜあの日、公園のベンチにいたのか。

なぜあの時、私に家に泊めてと進言したのか。



……たぶん彼は、そのこたえを、明かしてくれるだろう。

けれど、解き明かすことがこわい。



もう一緒にはいられない気がして、口を開くことを躊躇ってしまう。



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