今夜はずっと、離してあげない。
慌てて近くの棚を漁って、救急箱を引っ張り出した千井。
体育祭の時に使うためのものだとか言ってたけど、今は棚を漁ってる時間が惜しいらしい。
「千井、なんでそんなの知ってるの?」
「僕いちお保健委員だから」
「え、てっきり千住サマがやってるのかと……」
「ちずは今回文化祭実行委員に抜擢されてた」
……たぶん、立候補じゃなく、他薦だろうなあ。
先生に強制的にやらされたんだと思う。きっと。
千井の処置は迅速かつ丁寧で、包帯も綺麗に巻かれていた。てっきり手先は不器用だと思ってたんだけど。人は見かけによらないらしい。
「結構血が出てたけど、もしかしてちょっと時間経ってから来た?」
「うん。大丈夫かなあって放っておいたら、ペンキ取りに行ってた凛琉が朝水くんと帰ってきて、あとはやっておくから保健室直行!って追い出された」
「そりゃ追い出されない方がおかしい……」