今夜はずっと、離してあげない。
きょとん、とする凛琉に、突如として落ちる影。
「あ、朝水くんだ」
「ま、またまた〜。そんな2回連続で騙されるわたしじゃないよ、真生」
「…………りる、」
「っ?!?!!!」
その声の主をバッと振り仰いだ凛琉は、口をあんぐりと開けた。
なにせ、本当に朝水くんの姿があったのだから。
「あ、朝水くん?!えっ、ほん、本物?!」
「……逆に、おれの偽物、いるの?」
的確なツッコミ。
朝水くんとはほとんど、というかもう全くと言っていいほどに会話をしたことがないから分からないけど、悪い人ではないと思う。
あの千住サマが一緒にいるんだし。
「……氷高、さん。りる、借りてい?」
朝水くんの口から初めて私の名前を呼ばれたことに驚きながらも、ほんのちょっとの悪戯心が湧き上がる。
「んー……、まだ交代時間じゃないんだけど……」
ちらちら、とこちらを伺いみる凛琉とじいっとガン見してくる朝水くんに、仕方なさげに微笑みかける。
「まあでも、受付はひとりで十分足りるから、いいよ。いってらっしゃい」